ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
背中に羽が生えて、空のかなたまで、飛んでいけると思うくらい、葵は嬉しかった。幸せだった。
そして葵はそれから一年間、大学に通う彼と一緒に通学したくて、早起きをするようになったのだ。
電車に乗っているのは十分程度だが、それでも幸せだった。
それまでいつも遅刻ギリギリだった葵の変化を、家族が喜んだのはいうまでもない。
蒼佑と出会ってから、葵は本当にずっと、幸せだったのだ。
(でも……それもただ、義理でこなしていただけ……なのよね)
蒼佑が葵に優しかったのは、大臣までつとめた大物政治家の孫娘だったから。
家のために許嫁として葵を受け入れただけで、彼ほどの男からしたら、恋に恋する女子高生の機嫌を取ることなど、子供の手をひねるような容易さだっただろう。
(本当に私、馬鹿だったわ……)
葵は、子供だった自分の愚かさが、可哀そうで、自分の事のはずなのに、まるで他人のように感じてしまっていた。