ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
日曜日なのでお客様のご来店は多かったが、葵は紳士服フロアのオーダースーツ担当なので、お客様が行列を作るような売り場ではない。
基本的に常連の対応がメインだ。仕事は何事もなく、いつも通りだった。
夕方、六時過ぎ。売り場の奥の事務所で、帰り支度をしていた葵のもとに、バタバタと慌てたように、制服姿の先輩である、間島が姿を現した。
「たったったっ、大変っ!」
「えっ? どうしたんですか? もしかして私、なにかミスしましたかっ!?」
慌てたように事務所に飛び込んで来た間島の顔を見て、すっかり帰る気分だった葵は、真っ青になった。
「ちっがーう!」
間島はプルプルと首を振り、それから身もだえするようにして、葵に詰め寄る。
「すっっっごい、イケメンが、来てるっ! しかもっ、葵ちゃんご指名でっ……!」
間島は葵の一回り年上なのだが、非常に若々しく、正社員と契約社員という垣根を越えて、葵が親しくしている間柄だった。
だから葵も、上司というよりも、気の合う先輩くらいの態度でいたのだが、この時ばかりは、唖然として、声が出なかった。