ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
南天百貨店六階の紳士服オーダーサロンは、その名の通りサロンになっていて、一見すればギャラリーのようなたたずまいである。三十畳ほどの広いフロアには、大きなソファーセットが三つあり、続き部屋に採寸のための部屋がある。
六時を過ぎ、客はひとりだけ。
そう、天野蒼佑だ。
まるで映画から抜け出したようなたたずまいで、長い足を組み、ひとり用のソファーに腰を下ろし、窓から駅前を見下ろしていた。
普通なら接客を受けているはずだが、そんな彼から数m離れたところに、間島と、その上司である紳士服フロアのマネージャーもおり、緊張した様子で立っている。
(どうして距離をとってるんだろう……?)
「あの……」
葵が背後から声をかけると、ふたりがハッとしたように振り返り、それから至極まじめな顔で、近付いてきた。
「椎名さん、頼んだよ」
「よろしく」
「えっ……?」
(目が本気だ!)
上司たちの様子に戸惑い、目を丸くする葵だが、そのまま強引に、蒼佑の座っているソファーのほうに押し出されてしまう。