ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「――お待たせしました」
仕方なく葵が声を掛けると、それまでどこか憂鬱そうに窓の外を眺めていた蒼佑が、顔を上げ、パッと笑顔になった。
「葵」
「――」
葵が無言になったのを見て、少し困ったように蒼佑が視線をそらした。
「急に来て、すまなかった」
「いえ。とんでもありません」
葵はきっぱりと答える。
そしてこれは仕事だと、何度も自分に言い聞かせながら、にっこりと笑顔を作った。
結局蒼佑は、秋用のジャケットをつくるという名目で、いくつか生地を選んだ。
予算に上限はないと言われたので、これぞというものを勧めたし、最終的には間島と年配のマネージャーが対応してくれたのでいいのだが、なんとなく胸にモヤモヤしたものが残っていた。
「では、採寸は来週にでも伺います」
気が付けばもう閉店時間だ。
蒼佑はそうさらりと言って、ソファーから立ち上がった。
「――椎名さん」
間島がそっと、葵の背中を指でつつく。
見送れという合図だ。