ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
だが蒼佑は葵の言葉にひどく動揺したらしい。
「――そんなこと、しない……どうしたら信じてくれる?」
うめくように返事をした蒼佑はとても苦しそうで、だからこそ、葵の心の奥のほの暗い感情の中に、ポッとマッチ一本分の明かりがついたような、不思議な気持ちになった。
(私、いま、すごく意地悪なことを言ったのに……少しスッキリしてる)
今まで、他人に対して、こんな気持ちになったことは一度もなかった。
他人を傷つけて胸がすくなんて、最低だと思うのに、ほんの少しだけれど、いい気分になっている自分に、葵は驚いた。
(私……最低だな……)
だが、ここでまた曖昧な態度をとれば、蒼佑との関りを断ち切ることなどできないだろう。
葵はかすかに震えている手をもう一方の手でぎゅっと握りしめ、それからゆっくりと口を開く。
「信じるも何も、私、あなたの話なんて、なにも聞きたくないの。だって、あなたが言いたいことって、今さらの言い訳か後悔か、とにかく今の私に関係ない、なにかでしょう? そんなの口にしたって、すっきりするのはあなただけじゃない。そんなの、どうして私が聞いてあげないといけないの?」