ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
そういう葵だって、透き通って見えるほど白い肌と、緩く巻いた黒髪、そして澄んだ大きな目は、他人の目をひくのだが、地味に静かに生きたいと思っている葵は、意識して地味で目立たない格好を選んでいたのだった。
「今日はなんの撮影なんですか?」
「えっとですね、HF(ヘブンズフィールド)さんの清涼飲料水のポスター撮りですね。秋に出るマロン味の紅茶です」
「――えっ」
その瞬間、葵は頭から殴られたような衝撃を受けた。
「あっ、たしかにマロン味の紅茶ってどうかなって思いますよね。それが意外にも美味しくて――」
大内は、驚いて目を丸くする葵に、楽しそうに飲料水の説明を始めたのだが、葵はそれどころではない、息が止まりそうなくらいに動揺していた――。
HF。清涼飲料水からビール、ワインなどのアルコールまで取り扱う、大手飲料水メーカーだ。コンビニでも自販機でも、道を歩けばどこにだってHFの商品は目に入る、押しも押されぬ大企業である。
だが葵にとって、HFは鬼門だった。