ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「大丈夫。エレベーターを支えているケーブルはそう簡単には切れない。仮に一本切れたところで、ビクともしないし、そして万が一ケーブルが全部切れたとしても、自動でブレーキがかかる設計になっている。そしてエレベーターは完全な密室じゃない。通気口があるから、酸素がなくなることはない」
「で、でもっ……」

 葵は、震えながら、すうっと息を吸い込むが、なんだか息苦しい気がするのだ。

 パクパクと口を開いたり、閉じたりする葵を見て、

「それは緊張して、うまく息が吸えなくなっているだけだ。大丈夫。ゆっくり、息をしてご覧」

 蒼佑は相も変わらず落ち着いた様子で、葵の背中を撫でる。

 言われて、葵は大きく息を吸い、そしてゆっくりと吐く。
 何度もそうやって繰り返している内に、肺に空気が満ちていく感じがした。

「――息……できる」
「そう……大丈夫だ……」

 ホッとしたように蒼佑は息を漏らした後、葵の両肩をつかみ、顔を覗き込んだ。

「――葵、立っていると疲れるだろう。ここに座って」
「うん……」

 確かにいちいちふらつくより、座っていたほうがいいかもしれない。

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