ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「ありがとう」
蒼佑が葵の隣に腰を下ろすと、ほんの少しだがエレベーターが少し揺れて、体に緊張が走る。
落ちないとわかっているのに、落ちたらどうしようと恐怖が先に走る。
(やだ、やっぱり怖い……!)
ギュッと目をつぶると、
「――葵」
蒼佑が当然のように、葵の肩を抱き寄せようと身じろぎする。
抱きしめられる――。
その瞬間、また葵の心臓がギュッと締め付けられた。
今日何度も、蒼佑に触れられた。
彼の大きな広い胸に抱きしめられて、背中を撫でられて、嫌な気持ちはしなかった。
そう、嫌な気がしなかったのだ。
葵はそんな自分に絶望してしまう。
自分はどうしてこんなに学習能力がないのだろう。
こんな風にほだされていく自分が馬鹿に思えて仕方ない。
「やめて……」
だから、とっさに彼の手を拒む言葉を口に出していた。
そして膝の上に額をくっつけて、ギュッと目を閉じた。
「もう酔ってないから……さめたから……」
「――わかった」
蒼佑はそれ以上なにを言うわけでもなく、黙って手を引いた。