ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
(そんなの……嘘でしょ……?)
だが、淡々と語る蒼佑の横顔は静謐で、真摯で、冗談でも、嘘だと口を挟めない重みのようなものがあった。
「八年前の冬……君は携帯電話すらもたせてもらえない学校に通うレベルの、箱入り娘だった。連絡のとりようがなかった。とりあえず会いに行こうとしたら、俺の家に、君が来た」
「あ……」
そうだ。葵も両親から婚約破棄のことを聞いて、いても経ってもいられず、天野家に押しかけたのだ。
「最初に君を対応したのは、使用人で、その後は両親だった。違う?」
「――そうよ」
葵はこっくりとうなずいた。
蒼佑の言うとおり、葵は子供だった。母以上に、祖父に溺愛され、蝶よ花よと育てられ、実に子供っぽい子供だった。
その葵が、夜こっそりと家を抜け出しタクシーに飛び乗ったのだ。
どうしても蒼佑に会いたくて――。俺も君が好きだ、別れたくないと言ってほしくて、会いに行ったのだ。
「俺は両親から、『葵さんが婚約破棄を受け入れに来た。その挨拶だ』と告げられた」