めはくちほどに

お客様用のスリッパを出してくれている。心なしか玄関の靴も綺麗に揃っていた。

「おかえり。鷹村さん、いらっしゃいませ」

「ただいまー」

「こんばんは、お邪魔します」

いらっしゃいませって。星子が家に歓迎するなんて、今後見られるものではないかもしれない。

台所の方から良い香りがする。葉苗が「おかえりー」と少し大きな声で言ってきた。同じようにただいまと返す。

「今日海都くん居ないの?」

「金曜の夜はバイトなんですよ。帰ってくるのは二時くらいかな」

「どこで?」

「居酒屋です。ラストまでだと時給が良いとかで」

< 38 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop