めはくちほどに
お客様用のスリッパを出してくれている。心なしか玄関の靴も綺麗に揃っていた。
「おかえり。鷹村さん、いらっしゃいませ」
「ただいまー」
「こんばんは、お邪魔します」
いらっしゃいませって。星子が家に歓迎するなんて、今後見られるものではないかもしれない。
台所の方から良い香りがする。葉苗が「おかえりー」と少し大きな声で言ってきた。同じようにただいまと返す。
「今日海都くん居ないの?」
「金曜の夜はバイトなんですよ。帰ってくるのは二時くらいかな」
「どこで?」
「居酒屋です。ラストまでだと時給が良いとかで」