お茶にしましょうか
江波くんがかき氷を食している間にも、毒舌をお持ちの彼は、邪魔をしています。
江波くんは、彼の頭を控えめにはたくであったり、彼の手を払い除けるであったり、何かしらの抵抗をされています。
お二人は見るからに、本当に親しく仲が良いのだとわかります。
ほんの少しですが、妬いてしまうほどです。
彼は江波くんをあれほど、はしゃがせることができてしまうのですから。
「気付きませんでした。あなたも、恋敵だったのですね」
「え」
毒舌をお持ちの彼は驚き、動きを止めてしまいました。
「あなたも江波くんのことが、大好きなのですね!」
「ま、まぁ……嫌いではないけど」
「江波くんは、やはり誰からも好かれるのですね!」
「い、いや、あの…俺はそんなことは……な──」
「でも、確かにチームで江波のことを嫌う奴は……まず居なかったね」
「……いや。そんなこともなかったぞ」
「へぇ。鈍感な江波でも、心当たりのある奴が居たの?鈍感なくせに」
「お前な……」
また私を放って置いて、二人で会話を始めてしまいました。
お二人は仲良しであるのですから、当然のことでしょう。
私は構いません。
しかし、そうは言っても、やはり流石の私でも、一人は寂しいものであります。
静かにかき氷の蜜の甘さを感じ、蜜の色を眺めました。
それは、鮮やかな色をしています。
それは、鮮やかで賑やかな色であります。
隣も非常に賑やかです。
見ているだけでも、十分に楽しいのですが、やはりその輪に交わりたいとも思います。
眺めた器の中身は溶け始め、蜜と氷の残骸が交わっていました。
それを、徒にかき混ぜてみたのです。