お茶にしましょうか



「大丈夫ですか……?」



突然、江波くんがそっと、私の顔を覗き込んだのです。

私は驚き、少し体が跳ねました。

江波くんのその表情は、何かしら心配してくださっているようでした。



「ええ。平気です。ただ楽しそうなお二人を見て、微笑ましく思って……」



見ているだけで私も楽しいのです、と最後に付け加えると、江波くんはしばらく私の顔を見ていました。

そのような江波くんを不思議に思い、私も江波くんのお顔を観察しておりました。

かと思えば、江波くんは僅かに微笑み、にらめっこは容易に終わったのです。



「かき氷……美味しかったですね」

「……え?ええ」



江波くんが突然にそのようなことをおっしゃるので、私は咄嗟に短い言葉しか出ませんでした。

私は他に言葉が見つからず、黙り込み、そのままで居りました。

すると、江波くんは私に覚られないようにか、然り気無く黒目だけを動かし、私の様子を窺っているようです。

小さく唇も噛み締めてみえて、頭の中で何か思考を巡らせている風でした。
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