お茶にしましょうか

私は突然、不安になり、江波くんに謝ろうとしました。

しかし、それは何かを決心した彼に、遮られてしまいました。



「……萩原さんの言う通りですね」

「え?」

「せっかく来たんだし…楽しまないと、来た意味無いですよね」



江波くんは、少し困った様に笑っていました。



「本当に……萩原さんには、敵わないな……」

「私、浮かれ過ぎてしまって……ごめんなさい」

「謝らなくていいですよ。とにかく、怪我だけは、絶対に、しないでくださいね」



相変わらず、なんと寛大な方なのでしょう。

私が迷惑をかけたにも関わらず、気遣いをしてくださる、どこまでも紳士な江波くんに、私はまたときめいておりました。

その愛しの江波くんの後方に、構える毒舌の彼の姿が見えました。



「江波くん、後ろ!」



え、と江波くんが振り向いた瞬間に、毒舌の彼は足を振りかぶったのです。

大量の水が、江波くんの全身を濡らしていました。

その時、江波くんから切替器のような音が聞こえました。
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