お茶にしましょうか
「そういえば、マネージャーさんは、お元気でいらっしゃいますか?」
「あ。マネージャー、今何してるの?」
「今は県外の大学行って、一人暮らししてる。昔から、高校教師になりたいって言ってたんだ」
「厳しい先生になられそうですね……」
私がそう言うと、確かに、と笑ってくださいました。
彼女も夢を追って、頑張ってらっしゃるようです。
何故かしら、自分のことのように嬉しくなりました。
江波くんとまた目が合うと、江波くんは私に問いました。
「そういえば、萩原さんは目指しているものとか、夢とかあるんですか?」
その問いに、私はよく考えさせられました。
なぜなら、特に何も見当たらなかったからです。
そもそも、探したこともありませんでした。
「そっか。もうそんな時期か。だとしたら、そろそろだね、進路希望調査。
やっぱり、音楽の道に進むの?」
『音楽の道』という言葉の響きを聞いただけで、自身の中で、それは容易に切り捨てられないものである、と実感しました。
一瞬でも、何もせずとも、確かに心が揺らぎました。
相棒であり、愛人のリョウさんと共に、生きてゆけるのなら、なんと素敵なことでしょう。
しかし、自分の中だけで、自己を満足させるためにしてきたものであります。
はたしてそれは、外で通用するでしょうか。
今更になって、進路を決める必要性に気づき、それは今、焦りと変わりました。
少し遠くで、鴎が鳴いています。