センチメンタル
「・・・あ、えっと、はい?」
きっと赤面していたはずだ。あたしはみっともなく上ずった声で聞き返し、頭の中でそんな自分をスリッパで殴りつけていた。
「篠原、何だって?もう来るって?」
武田君がそう聞くのに、あたしはがっくりと肩を落として首を振る。それを見て武田君はうー、と困ったような声を出した。
「マジか。そっちも?岸岡達も来れないっていうんだよ。岸岡は親に外出禁止くらって、三波は風邪ひいたとかで」
「えー!外出禁止って、岸岡君一体何したの?てか、て言うか、なんと、全滅・・・?」
「そういうことに・・・なるよな。俺達以外は」
つい二人で顔を見合わせて呆然としてしまった。
ちょっと離れた山間の町にある大きい遊園地に、日曜日に皆で遊びに行こうって最初に言い出したのは、クラスでもお調子者で通っている岸岡君だった。
俺、いいとこ知ってんだよなー、って彼が大きな声、大きな笑顔で話していたのが一昨日のこと。昔っからあるらしいけど、最近も新しい乗り物とかガンガン出来たんだってー、と。
その時、つい先週行われたばかりの文化祭でしたクラスの出し物の反省文を、放課後までに担任の先生に提出しなくてはならず、机でまとめていた私とアユミ、鈴の3人にも声がかかったのだった。
『ねー、そこの女子3人も一緒に行かね?クラス皆でっていいたいけどそれは現実的じゃねーから、とりあえず今ここにいるメンバーで懇親会を兼ねて、皆で遊びに行こうぜー』
岸岡君はそう言いながら自分の周囲にいて彼をぽかんと見上げている武田君と三波君の肩を叩いたのだ。