センチメンタル


 机を囲む女子3人で、最初ににやりと笑ったのはアユミだった。すぐさま私と鈴に日曜日の予定を聞き、二人が何もないと答えたのを聞いてから同じくらい大きな声で答えていた。

『オッケー、あたしら参加するよ~』

 え、マジで?

 そう思ったけれど、特に予定もなく男女混合での遊園地に嫉妬してくれるような彼氏もいなかったので、それは口には出さないで置いた。

 そんなわけで同じ高校の同じクラスの男女6人で、急遽田舎の大きな遊園地にいくことになったのだった。午前中に一緒に待ち合わせていくのは小学生みたいで面白くないから、現地で待ち合わせしようぜって岸岡君がいって、それも面白いね、ってアユミがのってしまったからまさかの現地集合になった。

 ・・・なのに。

 なーのーに。

 今朝、その現地に来ているのは私と武田君だけなのだ。

 岸岡君は何かをしでかして親を激怒させた結果の外出禁止をくらい、三波君は急な発熱を伴う風邪、鈴は重い生理痛で、アユミはまさかのペットの災難。初めてきた場所、大きな遊園地の前で、私達二人は10分ほどただ突っ立っていただけだった。

 武田君が手持ち無沙汰そうに周囲を見回して、ぼそっと呟いた。

「・・・人、結構多いな」

「あ、うん」

 山に囲まれた盆地のような町の端っこにある大きな遊園地。恐らくここら辺で集客施設と呼べるのはこの遊園地だけなのだろう。最寄駅からはさほど遠くはなく、駅の方から歩いてくるカップルや家族連れがどんどん入口へと吸い込まれていく。


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