最後の恋愛 番外編 ☆もうひとつのストーリー☆
大麦だ!

唇で分かる。

けど、うっすら目を開けてその長い睫毛とひたいに滲む汗と力強い腕に再確認する。

大麦だ。

なんで・・

どうして・・???

「ん・・む、お、大麦ちょ・・ま!」

道路側にいる大麦の背中の向こう側を車が駆け抜けていく。

「あ、ぶないから、ちょっ・・!」

それでも唇を離そうとしない大麦の胸をついて、懇願する。

「待って、ストップ、大麦っ!てばっ!」

大麦は、しぶしぶ唇を引き剥がされて、べろりと舌舐めずりした。

「・・っなんでいるの。」

私は唇を手の甲でぬぐいつつ言った。

ガードレールをひょいと乗り越えて言う。

「柳生に聞いたから。」

ああ・・柳生さんにね・・。

どうりでそういや、電話口の向こうはどう考えても飲み屋の中って感じの騒音じゃなかった・・

ような気がする。
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