青い空の下、僕たちは今も



「ねぇねぇっ!
聞いてっ!」

「お姉ちゃん。どーしたの?」

「あのね―――――」



海に近いグラウンド


潮の香り

波の音

真っ赤な夕日をバックに
走り続けるあなた


「先輩っ!!!」


叫びながら近寄れば
足を止め、振り向いてくれる


「…何」

「お姉ちゃんから、聞きました」


あなたの顔が歪む

その顔を見て、きっと
私の心も歪んだんだろう


「…幸せそう、だった?」

「…はい」



「そっか」


そう呟いて、走り出す

また、私に背を向けて


「先輩は…これで良いんですか?」

「え?」

「自分だってそうなりたかったくせに」


お姉ちゃんのこと、好きなくせに


私は、あの日

わざと傷つける言葉を選んで
私の存在を、あなたに刻みつけようとした


でも、あなたは


「別に

俺は走れれば…それでいい」


そう言って、また
顔を歪めて笑う


そうじゃない

そうじゃないのに…


「…私で、いいじゃないですか」

「は?」


呟いた声は、足を止めていたあなたに
届いてしまった



あなたがこの時、走りだしていれば

私の声なんて
あなたの靴音に消されてしまっていたはずなのに


「私にすればいいのに

そしたら、絶対
そんな風には笑わせないのに」


自分から出てくる声が、思いの外明るくて安心した


先輩は、こちらを見つめたまま
何も言おうとしない

近づいて、目の前で手をひらつかせてみる


「おーい、先パーイ」

「…何」


少しこわばった声だった


「好きですよ」


大丈夫

私、笑えてる


この沈黙さえ、愛しいと思えた


「帰るか」


何か言いたいような表情で、ただ一言先輩はそう言った

また、優しい



それは私が、大切な人の妹だからですか



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