眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
信号に引っかかり止まった車の中、眼鏡なしの眞井さんが私を見る。
「社長として信頼してくれてるみたいだけど、男として信用してこの車に乗った?」
「――えっ?」
短い返事しかできないまま、信号が青に変わる。
その言葉の意味を考えようとして頭が真っ白になった。
自分の家まで向かってるはずなのに、なんだか怖くて花束を持っていた手がジワリと湿ってくる。
ドラマのあらすじなんてしゃべれるわけもなく無言で花束を持つ。
「ごめん。怖がらせたか」
ぽんぽんと頭を撫でられた。
「こっちは信用されたら、少し困るからな。つい」
反省しているような反省してないような、悪ぶれもしないセリフに顔を上げる。
困った社長の下がり眉が、可愛いと思えてしまい吹き出す。
「なんだ」
「いえ。あはは。いえ、なんでも」
「さっきまで困っているように見えたが、もう笑う。今泣いた烏がもう笑う――だったかな。いや、困らせたのは俺か」
そういうと、眞井さんもクスクスと笑い出す。顔は威圧的というか、身が引き締まってしまいそうに怖いのに、柔らかく笑う人だ。
身長が高いからからかな。座っていても見上げてしまう。
「そうですね。眞井さんが素敵すぎるのに意地悪言うから困ります」
「……」