眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。

信号に引っかかり止まった車の中、眼鏡なしの眞井さんが私を見る。


「社長として信頼してくれてるみたいだけど、男として信用してこの車に乗った?」

「――えっ?」

 短い返事しかできないまま、信号が青に変わる。
 その言葉の意味を考えようとして頭が真っ白になった。

 自分の家まで向かってるはずなのに、なんだか怖くて花束を持っていた手がジワリと湿ってくる。

 ドラマのあらすじなんてしゃべれるわけもなく無言で花束を持つ。


「ごめん。怖がらせたか」

ぽんぽんと頭を撫でられた。


「こっちは信用されたら、少し困るからな。つい」

 反省しているような反省してないような、悪ぶれもしないセリフに顔を上げる。


困った社長の下がり眉が、可愛いと思えてしまい吹き出す。

「なんだ」

「いえ。あはは。いえ、なんでも」

「さっきまで困っているように見えたが、もう笑う。今泣いた烏がもう笑う――だったかな。いや、困らせたのは俺か」

 そういうと、眞井さんもクスクスと笑い出す。顔は威圧的というか、身が引き締まってしまいそうに怖いのに、柔らかく笑う人だ。

 身長が高いからからかな。座っていても見上げてしまう。

「そうですね。眞井さんが素敵すぎるのに意地悪言うから困ります」

「……」
< 23 / 58 >

この作品をシェア

pagetop