眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。

「ご、めっなさっ」

鞄で隠そうとしたら、カバンを奪われる。

なので私は両手で顔を隠した。


「派遣のくせに浮かれて、――浮かれてごめんなさい」

「きっかけが派遣だっただけで、俺は能力さえあれば派遣でも何も問題ない。その件は気にしなくていい」

「でも私、本当に綺麗じゃないし、眞井さんの隣じゃ不釣り合いだし、契約もう切れちゃうから眞井さんに会えなくなるし」

 たくさんのドキドキを貰った。それなのに迷惑しかかけなかった。

べそべそ泣いていると、強引に手を掴まれエレベーターから降ろされた。

すぐにエレベーターは下に降りていき逃げられない状況の中、恐る恐る眞井さんを見る。


「一か月で派遣の契約が切れるなら、一か月後に俺と新しい契約を結べばいいだろう。俺はそう言うつもりだった」

涙を指先で拭われ、思わず息を飲む。

「一か月後に正式に言おうと思っていたが、やめた。今すぐ君の涙を止めたい」

抱きしめられる。強く抱きしめられ、眞井さんの匂いに包まれて頭がくらくらする。香水さえも私を虜にするなんてずるい。

「初めて会った時から可愛いと、運命だと思っていた。君にもそう思わせようと、ゆっくり口説いていたんだが、気づいてたろ?」

「……だって、あ、甘いです。きづきますっ」
「素直だな。素直で一生懸命で、動きが小動物みたいで、真面目で鈍くて、それでいてただの靴を、履いた瞬間にガラスの靴に変えてくれた」

抱きしめられた眞井さんの心臓も私と同じぐらい早く脈打っているのが分かった。
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