俺はいつも一歩遅くて…。

「それでそれで〜
一体何の話をしてたんですかー?」
そう言って俺の顔を覗いてきた。

「凛には教えねぇ」

ってか教えられるわけないだろ

「でた。またこんな意地悪する。
椿〜まこ〜教えてよー」

「俺何の話したか、忘れちゃった‼︎」

「私も〜」

「えええ‼︎3人して酷すぎる」



4人で登校するのは毎日の日課。
下校も、一緒だ。


俺達4人は
同じマンションの隣どうし。

左端から
真琴、凛、俺、椿

の順で家があって
幼稚園から高校までずっと一緒だ。

何も変わらない
変わったのは俺らの背丈と
仲の良さが深まったぐらいか。

それと。
凛への思いが大きくなった。



俺は不意に自分の手を見る。


ヒラヒラヒラ
桜の花びらが手のひらに降ってきた


「もうほとんどの桜が散っちゃってるねー」

そう言いながら
凛は俺の手のひらにのった
桜の花びらを覗き込んだ。

「そうだな。もう春が終わる…」

「なずは、春が好きだよねっ‼︎
特に桜の花がっ‼︎」

あぁ。俺は春が、桜が好きだ。

「あれっ?そーだっけ?」
真琴がきょとんとした顔で言う。

「俺もしらなかった。
そんな話したことあったっけ?」
椿も驚いて言う。

「話したことはないな。」
別に話す内容でもないし。

「話さなくても分かるよっ。
幼馴染だし。なずはいつだって
春になるとぼーっと桜の木ばっかり
見てるんだもん。」

凛はそー言って
クスクス笑った。

「確かに。なずなはいっつも
桜の木見てたりするよね〜」
真琴も凛と一緒にクスクス笑う。

「あー。俺はてっきり
桜で誰か連想してるのかと…」


「どー言う意味だよそれ。」
俺が睨む。

「いやぁ〜。
桜の付く名前の女の子とか?
だってお前モテるんだし。
今まで振ってしまった子で
心残りな子の1人や2人…」

「お前と一緒にするな」

そう言って俺は椿の頭をポツンと
叩いた。

「え…そうなの?」

ほら見ろ。凛が本気にした

「違う。桜が好きなんだ。


でもまぁ
何かを思い出すってのは
外れてはいないかもな。」


こいつらは忘れているだろうけど。


あれは俺がまだ4歳の時だった。
まだ幼稚園に馴染めない俺を見かねてか
真琴、椿、凛は
俺の家に急に押し入った。

そして俺は無理矢理外に連れ出されて
ある公園に連れてこられた。

そこはとても沢山の桜に囲まれていた公園で
大きな泉は桜の花びらで埋め尽くされ
ピンクのじゅうたんのようになっていた。

そして3人は俺に
沢山の桜の花びらを
花吹雪のように俺にかけながら言った。






「ようこそこの街へ」
真琴が急に言った

「お前と俺らは今日から友達だ。」
椿も続けて言った。


この言葉…



「辛い事や、悲しい事があったら
何でも話して。
絶対に笑顔にしてあげる。」

凛は笑顔でそう言うと
俺の方を見た


「お前ら…覚えてっ」


「あったりまえでしょ?
なずなのあんな酷い泣き顔
絶対に忘れられないもんねっ」
真琴そう言うと思い出したかのように
また、笑い出した。


「俺も今でも鮮明に覚えてる。
あの泣き顔は本気で驚いたぜ。」

椿も続けて笑う。


「おい。お前らなぁ。
俺にとってはあれは
凄く大切な思い出なんだぞ?」

「ごめんごめん」
真琴はそう言いながらも
ずっと笑っていた


「もし公園のことがなかったら、なずと
こんなに楽しく生活できてなかったんだね」

そう言いながら凛は遠くを見ていった

「お。おぅ。」



「私、なずなと友達になれて
幼馴染になれて本当に良かった‼︎」
眩しい笑顔で凛はそう言った。



どくんっ



本当に、
こいつは素直に
思ってる事を直球で伝えるから
タチが悪い。





幼馴染で良かった…か…
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