秘密の糸Season1㊤
電柱に隠れてしばらく立っていたその時、


さっきの男が、走って戻ってきた。


(こいつ、さっきの…!問い詰めないと!)


俺はとっさにそいつを呼び止めた。


「おい!お前!」


その男は、俺に呼び止められてびっくりしていた。


「…え?俺ですか?」


「そうだよ。」


「何ですか?」


「単刀直入に聞く。お前、円花の何?」


「え…。円花?」


「お前さっき、円花と相合傘してただろ?」


「あ、ああ…。…三田倉ですか?」


「そうだよ。」


「俺はただの、バイト仲間です。」


「はっ?バイト?」


「ご存知じゃないですか?三田倉は今、俺と同じバイト先で働いてます。」


(何だそれ…。聞いてないぞ円花…。)


「…もしかして、三田倉の彼氏さんですか?」


「そうだよ。」


「そうですか…。」 


そう言った瞬間、そいつは寂しげな顔をしていた。


「ただのバイト仲間が何で家まで送ってんの?」


俺は更に、そいつを問い詰めた。


「それは、傘を忘れた俺に彼女…いや、三田倉さんが声を掛けてくれて…。
風邪ひくからって言って、自分の傘に俺を入れてくれたんです。
だから、お礼に送りました。
…けど軽率でした。すみませんでした。
けど俺と三田倉は、そんな関係じゃないので。」


そう言って、そいつは頭を下げた。


「お前自身は?円花のこと、好きなのか?」


俺がそう言った時、そいつの表情は曇っていた。


「え?いや、正直分かりません…。」


「は?」


「まだあって、間もないので…。」


「悪いけど、円花は俺のだから。」


「分かってます。取るつもりなんてありませんから。
…それじゃ」


そう言って、そいつは帰って行った。


悪い気もしたが、円花の彼氏は俺だ。


絶対、誰にも渡さない。


けど何で、円花は俺にバイトの事黙ってたんだ…?


俺は、その事が疑問で頭に残った。
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