秘密の糸Season1㊤
「あ、お疲れ様です武藤さん。」

「お疲れ様です…」

今は何となく、ウチは目が合わせられなかった。

「…大丈夫ですか?」

「…撮影中止になってすみません…。」

ほんと、自分が情けない。

辛い。

だけど1番辛いって、須藤さんに心配される事だ。

プロとしての前に…あんな所須藤さんに見られてたのが恥ずかしかった。

そしてウチは話題を変えた。

「…須藤さんこそ大丈夫なんですか?」

だけどウチが言った言葉は今1番言いたくない言葉だった。

「え?」

その時突然須藤さんは驚いていた。

(…何言ってんだウチ。)

だけどウチは、その後もどんどん須藤さんを突きつけた。

「全部聞きました、円花から。」

「あ…ああ…。俺は大丈夫ですよ」

須藤さんにとって今1番聞かれたくない事なのに

ウチは、傷口に塩を塗ってしまった。

人として最低だ。

自分でも何が言いたいか分からない…。

そしてその時の須藤さんの笑顔は作り笑顔だった。

「…嘘つき。」

そしてウチは口に出していた。

そんなふうに笑うなよ…。

ムリして笑う須藤さんの顔を見るのがうちには辛かったんだ。

だってこれが、ウチが初めてした初恋だから。

「え?」

須藤さんはびっくりしていた。

「…円花が好きなんでしょ?」

分かってるのに何でこんなこと聞いたんだ。

…どうしようもねえーのに

今のウチ、マジサイテーだ。

「あの…武藤さん?」

須藤さんは困っていた。

ウチは須藤さんを抱きしめた。

「え?」

「そんな辛い思いすんならウチが忘れさせてあげる。」

「え?」

「…円花の代わりでいいから、だから…ウチを見てよ。」

そしてウチは腕を離した。

「…武藤さん?」

「好き」

ウチは須藤さんの顔を掴んだ。

そして須藤さんにキスをした
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