眠り姫の憂鬱。
私はこの優しい先生は好きだけど、病院はあまり好きじゃない。
病院に来る人はみんな不安そうな顔をしているから。
悲しそうにする家族を見た時はもっと嫌になる。
私の心臓が欠陥品だと知ったのは数年前。
両親が知ったのはもっと前だった。
私は人と同じように走ったり、遊んだりできないことを不思議に思ったりしていたけど、他人より体がちょっぴり弱いんだと信じて疑っていなかった。
『あのね、雅。…落ち着いてよく聞いてね』
ある日リビングに呼ばれ告げられた言葉は、まだ未熟な私にとって残酷なものであり、想像を絶するものであった。
現実を、真実を上手く受け入れることができなかった私は、拒絶する以外なかった。