スノーフレークス
「どういたしまして。お互い様よ。あの時は葵ちゃんも難儀だったわね。あそこは古くからある学校だから所々雑霊が紛れ込んでいるのよ」
 私は池のお化けに足を引っ張られたことを思い出して身震いする。
「こちらはすてきなお家ですね」
 私は部屋の中を見回して言う。
「ヨーロッパのインテリアが大好きなのよ。私は一日中家で仕事をしているものだからきれいな物に囲まれていたいの」
「晶子さんは何をされているのですか」
「株式トレーダーよ。パソコンの画面で株の値動きを観察しているの。最近流行りのFXなんかもやっているわ」
 何やら難しい単語が出てきたので横から氷室さんが助け舟を出す。
「母は株の売買を仕事にしている個人投資家よ。日本で株式市場が始まった頃からずっと株価の変動を観察してきたから、株の投資方法について独自の理論を編み出したのよ」
 私が大人になっても株式投資なんていう火遊びみたいなことはしたくないけど、晶子さんみたいな人なら株に詳しくなっても不思議ではない。持ち株の価格が暴落するようなことがあれば、雪女独特の勘が働いて事前に売り払うこともできるのだろう。
 人目を避けて暮らすには在宅の仕事が最適だ。これだけの家に住んで高級なドイツ車に乗っているくらいだから毎月相当な利ざやを稼いでいるのだろう。

「この前、あなたが見た仕事の方は雪の夜にしかできないのよ」
 晶子さんが死者の魂を送ることについて触れる。
「ええ。翠璃さんから少し聞きました。あなた方は病気で死んでいく人の苦痛を和らげているそうですが、それはボランティアでやっていることなのですか」
 私は好奇心にかられてたずねる。
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