スノーフレークス


 補習期間が終わると冬休みに入る。古城高校のような進学校では夏休みや春休みの間にも補習や模擬試験があるけど、さすがに荒れ模様が続く冬休みにはそういうものはない。
 私は学校から大量に課された宿題の山を片付けようとがんばっている。年末には我が家の大掃除をしなきゃいけないし、年始は家族とゆっくり初詣に行きたいから、年内には宿題を片付けたい。他の生徒たちはこの上予備校にも通っているのだから大したものだ。高瀬さんたち四人組は仲良く四人揃って駅前にある黎明予備校の冬期講習を受けている。

 行こうかやめようか迷っていたけど、結局私はクリスたちとスノーボードに出掛けることにした。家に籠もって勉強ばかりしていると頭が狂うからと言って、彼は私を雪山に引っ張り出した。私はクリスの勧めでウェアとボードをレンタルすることにした。
 大学で英語教師をしているクリスのお父さんがクリスと私、手島君の三人を県境のスキー場へ連れていってくれた。クリスは澁澤君も誘ったのだけど、澁澤君はインフルエンザにかかってしまったので来られなかった。この冬は外国から到来した新型のインフルエンザが流行っている。

 私は子どもの頃に一回スキーをしたことがあるくらいでスキー場に来るのは久しぶりだ。夏場はキャンプ場に変わるそのスキー場には周囲に丸太小屋風のコテージが建ち並んでいる。

 私と手島君は平たんな初心者コースに行き、スキー上級者のクリスたち親子はリフトで上のコースへ上がっていってしまった。「スノーボードは体で覚えるべし」と言って彼らは私たちを置いていってしまった。しばらくすると二人が豪快なスピードで蛇行しながら降りてくるのが見えた。

 私と手島君は初心者コースで子どもたちに囲まれ、よろけながら滑る練習をする。バランスを崩して尻餅をつくとお尻が結構痛くなる。私たちは子どもみたいに「ひゃーひゃー」わめきながら滑っている。
「手島君って生粋の地元っ子でしょ? スキーとかボードには慣れていないの?」 
 手島君の豪快な転びっぷりを見て私がたずねる。
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