【短編】とある悪い日の話
いつの間にか消えた線香花火の火薬のにおいと、七咲の香水のにおい。
意味わかんない。なにこの状況。
振りほどかない私、何なのほんと。
「……これでも、嘘ですかね」
唇が離れたと思えば、抱き寄せられて。
身長差のせいで七咲の胸に収まった私は、その心臓の音に驚いた。
どくどく、どくどく。
早い、七咲の心臓。
「七咲、」
「うわ、ちょっと顔見ないでもらってもいいすか」
「ぶっ」
顔をあげようとしたら、頭を押さえつけられて再び同じ場所に収まった。
今日は、朝からついていない。
絵に書いたような悪い日。
でも、その"今日"は随分前に終わっていたらしい。
「……誕生日、終わってるわ」
「えぇ!!」
スマホを開けば、0:15と表示されていて。
ということは、さっきの七咲のおめでとうは完全に遅刻。
「うっわ、だっせ、最悪」
はぁ、とため息をつく七咲が面白くて。