【短編】とある悪い日の話
私の誕生日を知ってる人なんて社内ではレアなはず。
人の大事な個人情報を一体誰から聞き出したんだか。
「…ひとつ聞いていい?」
「はい、いくつでも」
「七咲は、どうしてそんな息をするように嘘をつけるの?」
「……失礼すぎません?」
「だって、好きとか、絶対嘘。」
こんな愛想もない可愛げもない、口も悪い、仕事しかない私を好きだなんて、嘘。
「…例えば後輩に厳しいところとか」
少しずつ、線香花火の火が小さくなる。
「自分が厳しく言うことで次同じミスをして苦しまないようにって、遠回しの優しさが好きです」
オレンジ色の光を纏ったアーモンドアイが、私を映して。
「例えば、自分がミスした時。パッと見平気そうなのに、実は給湯室で泣きそうになってるとこ。強がりで、可愛くて、放っておけないです」
知らない間に、なんてとこ見てんのよ。
「例えば、俺に冷たいところ。意地になってるみたいで逆に気を引きたくなるから、少し腹立ちます」
「なっ」
腹立つって、なによ。
そう言おうとした私の声は、唇で塞がれてかき消された。