愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「先日、頼んでおいた部長をお迎えするハイヤー、うちが指定してる会社でお願いしなかったの?」

「え……?」

「迎えに来たのがいつものハイヤーじゃなかったらしいわ、しかも裏道を知らない新米運転手のせいで渋滞に巻き込まれて、あと一時間はかかるって……」

 いつも使ってるハイヤー会社――。

 嘘、そんなのあるなんて、知らなかった……ん? 待てよ――。

 私は、とあることを思い出して、研修の時にメモしたノートを確認する。すると、ページの端っこに自分で書いたと思われる「レティア指定ハイヤー番号」がしっかり書かれていた。

 知らなかったんじゃない、この会社に頼まなきゃならないのを忘れてたんだ――。

 あぁ~、やってしまった――。

 先日、水菜さんに部長のお迎えのため、ハイヤーに連絡を入れておくように頼まれた。けれど、私は別会社のタクシーを予約してしまったのだ。

 ど、どうしよう――。

「すみません! 指定してるタクシー会社とは違うところへ依頼してしまいました……」

 入社してから初めての失敗だ。私は、菜っ葉に塩をふりかけたようにシュンとしょげる。

「ミスしてしまったことは仕方がないわ、まずは部長に謝罪を入れて、私も一緒に行くから」

 水菜さんはしょぼくれた私に優しく笑いかけてくれた。


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