愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
 本日の日替わり定食のメインはアジの南蛮漬けだった。

 幸せな昼食のひと時。ひとり窓際に座って、定食を食べていると……。

「あ、ここ空いてる? あ、なんだよお前も日替わり? 真似すんなって」

 う、田辺君だ――。

 田辺篤。彼は鷹野部長と同じく第一営業課で私と同期。入社式でたまたま話す機会があってからというもの、なぜか私に絡んでくる。がっちりした体型で身長も鷹野部長より少し低いくらいだけれど、長身というには十分な高さだ。

「真似すんなって言われても、私の方が先に注文してここに座ってるんだけど?」

 私の向かいがちょうど空いてたからって、わざわざここに座らなくてもいいものを、田辺君は、日替わり定食を載せたトレーをテーブルに置いて、すでに一緒に食べる気満々みたいだ。

「私なんかと一緒に食べてるとこ、彼女に見られたら怒られるんじゃないの?」

「いーのいーの、あいつは部署も違うし、あまりここには来ないからさ。家に帰ってからもどうせ顔合わせるんだし」

 そう、田辺君はただいま同棲中で、庶務課にいる同期の彼女がいる。大学からの付き合いらしいけれど、就職先も同じって、よほど一緒にいたいのだろう。
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