愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
元すず亭だった敷地には、特に柵もなくて中に入ろうと思えば入れる。約束の時間までまだ三十分近くあるし、私は久しぶりに幼少の頃に遊んだ庭跡を巡った。
今は水が張られていない石造りの池には、枯葉やゴミが散らばっている。池の向こうには大きな松の木が立っていて、私の脳裏に遼一お兄ちゃんとかくれんぼをした記憶が蘇る。
懐かしいその哀愁にこらえきれなくなった感情が目頭を熱くさせた。次第に視界がぼやけてきて、瞬きをすれば、いまにも涙がこぼれ落ちそうになってしまう。自分の置かれた今の現状に、唇を噛み締めたその時だった。
「……茜ちゃん」
「っ――!?」
突然、背後から声がして弾かれるように振り向くと、そこには傘を持たずに佇む鷹野部長の姿があった。
今は水が張られていない石造りの池には、枯葉やゴミが散らばっている。池の向こうには大きな松の木が立っていて、私の脳裏に遼一お兄ちゃんとかくれんぼをした記憶が蘇る。
懐かしいその哀愁にこらえきれなくなった感情が目頭を熱くさせた。次第に視界がぼやけてきて、瞬きをすれば、いまにも涙がこぼれ落ちそうになってしまう。自分の置かれた今の現状に、唇を噛み締めたその時だった。
「……茜ちゃん」
「っ――!?」
突然、背後から声がして弾かれるように振り向くと、そこには傘を持たずに佇む鷹野部長の姿があった。