愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「鷹野部長は間違ってないですよ。ここはすず亭の場所……だったところです」

 湿っぽくなりたくない。私は人差し指で素早く滲んだ涙を拭うと、鷹野部長に笑って見せた。

「懐かしいな、覚えてるか? あの松の木の下で、かくれんぼしたろ?」

 鷹野部長、覚えててくれたんだ――。

「本当は、両親にも会って欲しかったんですけど……」

「……知ってたよ、ご両親のこと」

「え……?」

「といっても、つい先日知ったんだけどさ、すず亭が閉店していたことや、茜ちゃんのご両親がすでに亡くなられてたこと」

 今まで止んでいた雨が再びポツポツと降り出す。私は手元の傘をさすことなく、ただ鷹野部長を見つめた。

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