愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「そうですね、お連れ様もいらっしゃるようですし、このようなお話は、内密にされたいでしょうから」

 ムッカ~~! わざと鷹野部長の前でそんなふうに言ってるよね――!?

 この人は債務者なんですよ。と言わんばかりの言い方に腹が立つ。せっかく、鷹野部長とふたりでいい時間を過ごせたのに、最後にとんでもない後味の悪さが残ってしまった。

「では、これで失礼します」

 木下はそれだけ言うと、お辞儀もせずに闇に消えていった。

「あの男……どっかで……」

 見ると鷹野部長が首をかしげながらぶつぶつと考え込んでいる。

「あの、今の……忘れてください。今日は楽しかったです、おやすみなさい!」

「あっ! 茜ちゃん!」

 借金のことまではさすがに隠しておきたかった。けれど、あの男のせいで私が借金を抱えていることがわかってしまった。私は居た堪れなくなって、アパートの階段を駆け上り、鷹野部長の顔も見ることができずに部屋に飛び込んだ。

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