愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
 鷹野部長と木下の会話が一体なんのことなのかわからず、私はただ呆然と立ち尽くした。

「茜ちゃん、怖かっただろ」

 呆然と佇む私を鷹野部長がふわりと優しく抱きしめた。そして、その勢いで私は玄関の中へ押し込まれた。

「茜ちゃんはこれで自由の身だ。もう、どうしてこんなこと黙っていたんだ」

 少し身体を離すと、鷹野部長は私の頬を温かな両手で包み込んだ。まっすぐ私を見据える鷹野部長の瞳は慈愛に満ちていて、本当に私を愛してくれているのだと伝わってくる。

「わ、私……もう、こんな自分を嫌われたくなくて……嫌われるのが怖くて……」

 とめどもなく涙がこぼれ落ちて、みっともない泣き顔を正面から見られても、それを隠すことすらできなかった。

「この前、あの男を見た時に“債務”って言ってたのが気になってな、こっそり調べさせてもらったんだ。茜ちゃんのご両親が払い続けていた借金も、本当はもう完済していたものだったんだよ」

「え……?」

「あのマルコウ金融は業界でも有名な悪徳業者で、今までうまいことやってきたつもりだったかもしれないが、ようやく尻尾が掴めてね、茜ちゃんは不当利得返還請求ができるはずだ」

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