眠り姫の憂鬱
「すずちゃん、帰ろうか?また、今度ご飯食べに来よう。」
と1時間経たずに支払いを済ませ、店の前で手を振って、別れてから、私はカフェに向かって走り出す。

まだ、9時前だ。カフェはやっているかもしれない。

事故のことは覚えていないけれど、
少し怖くてカフェには行く気になれなかった。

でも、カフェで聞けば…

きっと事実がわかるだろう。



『美月、愛してる』

ショウゴさんの声が聞こえる気がする。

私は誰を愛していたの?


久しぶりに走って、つまずいて転んでしまう。

…ずっと、ショウゴさんが手を繋いでくれていたから、転んだりしなかった。

地面に四つん這いになって、
低く嗚咽する。

ショウゴさんは大切そうに抱きしめて
たくさんキスをしてくれた。

記憶をなくした私の不安な気持ちをいつも慰めてくれた。

私はショウゴさんの『愛してる。』と言う言葉を信じて、
一緒にいるうちにショウゴさんを好きになった。


きっと、すずちゃんが見たのは友人だ。

その日はたまたまショウゴさんがそこに居なかっただけだ。


私は立ち上がって、足を引きながら店を目指した。
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