天使の傷跡
そうして伸びてきた手が、まるで子猫をあやすように優しく私の頭を撫でる。
何度も何度も、慈しむように。
「すぐ真っ赤になって…。ほんとにお前は可愛いな」
「____」
僅か30センチほどの距離でそんなことを言われて頭は真っ白。
顔は真っ赤っか。
今日は下ろしてある髪を一房掴まれて、おもむろに課長がそこへと唇を落とした。
「…!!」
そのあまりにも色っぽすぎる一連の動作は、私の息を完全に止めるには充分過ぎた。
「…って、あまり焦ってお前を怖がらせたら何の意味もないよな」
ガチンと硬直した私を見るなり、それまで甘い香りを漂わせていた課長がスッと身を引く。
そうしてそれなりの距離を取ると、自分を落ち着かせるようにフーッと大きく息を吐きだした。