天使の傷跡

自分でもびっくりなほど、一目見たあの日から何度も福助のことを考えた。

足に傷を負った福助に自分を重ねているのか。
もっと違うことで惹きつけられているのか、自分にもよくわからない。
ただ、真っ直ぐにこちらを射貫くあの透き通った瞳が忘れられなかった。


本当に、どうしてこれほどまでに私の心に留まるのか____


「彼氏の飼ってる猫だから?」

「_____へ?」

一瞬言われたことがわからなくて沈黙する。

「____っ、かっ、かかかかっ、彼氏って…!!」

「ぶっ、どもり過ぎ。っていうか俺は優花の彼氏だろ?」

「ゆっ…?!」

優花って!
優花って!!!


想定を上回る展開に軽く頭はショート状態。
あわあわしながら目を泳がせまくる。
対照的に、私が焦れば焦るほど、課長はその表情を緩めていく。

蕩けるように甘く。
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