天使の傷跡
最初の頃は私を見て敵じゃないかをじっくり判断してからすり寄っていた福助も、今では声を聞いただけで近づいてくれるまでになっていた。
人一倍…というより猫一倍?、警戒心が強いという彼にこんな風に懐いてもらえるなんて、嬉しくないわけがないし会いたくなってしまうのも仕方のないことだと思う。
そう。私は福助に会いたくて来てるんだ。
自己暗示のように今日も自分に言い聞かせる。
「あ、これどうぞ。相変わらず大したものじゃないですけど…」
「おぉ、今日も悪いな。ほんとに嬉しいよ、ありがとう」
「…いえ」
真っ直ぐに注がれる感謝の言葉がくすぐったくて仕方ない。
毎朝課長におにぎりを手渡すという日課の他に、先週から新たに、私の作ったおかずを持参してここを訪れるという習慣が加わった。
もちろん課長にそうしてくれと言われたわけではない。
自分の意志でそうしているだけだ。