飛べない鳥に、口づけを。
矢沢さんはあたしを見て、一瞬戸惑った表情をした。
そして教えてくれる。
「会ってねぇよ。
俺も小沢樹なんかに会えたら舞い上がるがな……
一度も会ったことなんてねぇよ」
「そうなんですね」
それ以上何も言えず、あたしは薬に目を落とした。
数種類の薬を砕いた粉薬は、様々な色が混ざり合っていた。
一見ただの粉薬だが、これは小沢さんの命を繋ぐ大切な薬だ。
こうやって、例え僅かでも小沢さんの役に立てて嬉しく思えた。