飛べない鳥に、口づけを。






小沢さんは車椅子に乗っていた。

そして、その車椅子をヘルパーに押してもらい、あたしたちに近付く。

まだまだ距離があるというのに、樹君に会えた小沢さんは嬉しそうで、大きな声で話を始める。




「いっちゃん。よく来てくれたね。

ご飯食べてるか?

栄養のあるもの食べてるか?」



「うん、大丈夫だよ」




樹君は笑顔で小沢さんに告げる。

そして……小沢さんの視線は、ゆっくりとあたしに移る。

思わず固まってしまったあたしに、



「……川口さん、久しぶりです」



小沢さんは言う。



あたしのこと、覚えてくれていたんだ。

思わずにやけてしまった。


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