飛べない鳥に、口づけを。
アスール東京は快勝だった。
まさに、樹君の復帰に相応しい試合だった。
『小沢選手、お帰り』の横断幕を掲げているサポーターに律儀に頭を下げ、人々の声援に応えている樹君を見ながら、あたしはスタジアムを後にした。
辛い休養期間を終え、一夜にして注目の的になった樹君は、やっぱり遠い人になってしまった。
これからは街を一緒に歩いても、声をかけられる機会が増えるかもしれない。
それは喜ばしいことだが……寂しくも思う。
樹君はこれからもあたしだけの樹君であって欲しい。
そんなわがままで自己中心的な思いが溢れてくる。