飛べない鳥に、口づけを。





スタジアムから出る人々も、樹君の話題で持ちきりだった。

なかには、



「小沢樹、かっこいいね」



なんて声も飛び交っていて、それがあたしの胸を締め付ける。

樹君の復帰と勝利で飛び上がるほど嬉しいのに、この切ない気持ちは何だろう。





あたしは、スタジアムから少し離れたベンチに腰を下ろしていた。

つい先日、樹君と再会した際に、二人で座って会話したベンチだ。

あの時は隣に樹君がいたが、今は一人っきり。

冷たい風が、あたしの髪を撫でて通り過ぎた。



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