飛べない鳥に、口づけを。







あたしたちは、小沢さんの家の近くの和食料理店に入っていた。

こじんまりとしているが、落ち着いて上品な店だ。

案内されて椅子の席に座ると、隣に座っているカップルがこっちを見た。

こっちというより、樹さんを見ている。

そしておもむろに立ち上がり、樹さんに告げる。




「あのっ!小沢選手ですよね?

お怪我大丈夫ですか?

復帰を心待ちにしています!!」




その言葉を聞いて、やっぱり樹さんはサッカー選手なのだと思い知る。





何かの間違いであればいいなんて思っていた。

樹さんが普通の会社員だったら、あたしの言葉が彼を傷つけることなんてなかった。

それに……

彼女になれる可能性だって僅かにあったかもしれない。

それなのに、有名アスリートだなんて。


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