チェックメイト
互いに紙を交換して日野さんはざわめきの中へと向かっていった。

どうしよう、なんとなく緊張して先輩のほうを見れない。

凛は既にどこかに行っちゃったし、誰にも助けを求められないなんて。

「小林。」

「は、はい!」

「念の為に聞くが…今の男との間を邪魔したことになるか?」

「は?」

ようやく顔を上げてみればいつになく厳しい顔つきの先輩が日野さんの姿を目で追いかけていた。

「…いいえ。日野さんは既婚者ですし。」

「…チッ。既婚者の分際で。」

「はあ?」

小さな声で吐き捨てたセリフがにわかに信じがたくて私は思わず間抜けな声を出してしまった。

どうしたの、先輩。

結婚式見てうらやましくなっちゃったのか。

「先輩疲れてますね。」

「当たり前だ、疲れない筈がないだろう。何だあの品のない連中は。目障りにも程がある。」

それはつまりさっきまでレンジャーを囲っていた女性陣に対しての感想に違いない。

それにしても。

「やさぐれてませんか?」

「いつもこんなもんだろ。」

「いや…いつもより棘が刺々しいといいますか…。先輩も結婚したくなりましたか?」

思わずポロリと聞いてしまったがすぐに後悔した。

しまった、自らからかいのネタを振ったようなものだ。

先輩はいつも私の言葉を利用してからかってくるから。

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