チェックメイト
「小林はどうなんだ？」

「え？」

「結婚。」

予想外の言葉に正直戸惑ってしまった。

いつもと違ってからかうような雰囲気じゃなく純粋に質問しているのが分かる。

「それは…いつかはしたいですけど。」

「ふーん。相手もいないのに？」

「なっ！余計なお世話です！」

前言撤回！

やっぱり先輩はどこまでいっても意地悪な先輩のままだわ。

会えた時はこんな会話をする、二人の関係はそこまで大きく変わらない気がしてきた。

「あの男。さっきまでここに居た奴。」

「日野さんですか？」

「下の名前で呼ばせるなんて油断しすぎなんじゃねえの？」

呆れ声に貫かれた様で私は思わず固まってしまった。

「詰めが甘いというか隙があるというか、既婚者だからって安心していい訳じゃないからな。お前もいい年齢なんだから知っとけよ。」

体温が下がっていく気がする。

何だろう、何てことない会話なのに、今までの私なら噛みついて放っておいてくれと突き放していた筈なのに。

固く閉じた口が開こうとしてくれない。

「小林？」

なんだろう。強く突き放された気がして目の前が真っ暗になった。

「…以後気を付けます。」

そうやって打ち切るだけで精一杯だった。

< 13 / 33 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop