チェックメイト
「い、行きましょう!」

意気込んで告げると先輩は噴き出した。

「勝負を挑まれてるみてえ。」

「ち、違いますよ!」

「でもな、小林。俺は仕掛けるぞ?」

「何をですか?」

言われてる意味が分からず私は首を傾げた。

「とりあえず悪い虫を蹴散らしてからだな。」

こちらが納得する間もなく、会場の雰囲気が変わり新郎新婦による本日二回目のファーストバイトが披露される。

「わあ!可愛いケーキ!」

童話に出てくる馬車の様なケーキに声が跳ねた。

冠をモチーフにしているのかな、シンデレラをイメージさせるこのケーキは美月の様だ。

「小林、荷物貸せ。持ってやる。」

「え?でも…。」

「早くしろ。シャッターチャンス逃すぞ。」

「え?!あ、はい!!」

慌てて封筒をバッグに入れ待ち構えている先輩の手に差し出した。

花のように笑う美月の姿を逃さないように何枚もカメラに収めていく。

「撮れたか?」

「はい!見てくださいよ、これ…。」

「どれ。」

手元のカメラに顔を近付けてきた先輩の近さに息を飲んでしまった。

「どうした?」

ほんの少し上目遣いな先輩に反応した心が暴れだす。

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