チェックメイト
「…先輩、あの。」

「それ小林にやるよ。」

相談しようと思った矢先に告げられて私は瞬きを重ねた。

「一緒にいた友達とでも行って来い。」

凛と?

そう思って横目で凛を見ると、ペアだった男性から券を譲ってもらっている様だった。

どうしよう、二組もいらないな。

それにこの状況で凛を誘おうものならきっと眉を吊り上げて追い返されるに違いない。

だったら。

「せ、先輩。私と一緒に行きませんか!?」

顔を見ることが出来なかったけど、封筒を強く握りしめて私は勇気を出した。

「え?」

「一緒に貰ったんだし、せ、せっかくなので。」

「…へえ。」

そう発しただけで先輩は黙ってしまった。

すぐに返事を貰えなくて大きな後悔が私の中に渦巻いていく。

百年早いと言われるだろうか、はぐらかされそうで怖い。

断るなら早く断って!そんな思いで先輩のネクタイを見つめていると角度が変わったのが分かった。

その瞬間、耳元で低い声が私を翻弄する。

「俺をデートに誘ってんの?」

「…っ!?」

声にならない声を出して私の肩が跳ね上がった。

「いいぜ、乗った。」

その声に引き上げられるように顔を上げると目の前で先輩の笑顔が出迎えてくれる。

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