支社長は取り扱い要注意!
お父さんの言う通りなのかも知れない。

支社長の未来や将来を思って身を引いたと言うのは、悲劇のヒロインを気取っているだけなのかも知れない。

わたしは、支社長と向きあうどころか支社長の前から逃げ出した。

その方が彼のためだと思いながらも、心のどこかでは間違ったことをした自分を隠したかったのかも知れない。

「まひる」

お父さんがわたしの名前を呼んだ。

「支社長と向きあいなさい」

「えっ…?」

「本当は、支社長と離れたくなかったんだろ?」

そう言ったお父さんに、わたしは首を縦に振ってうなずいた。

「なら、今からでも遅くはない。

支社長と向きあって、離れたくないことや一緒にいたいことを彼に言いなさい。

向きあってダメだったら、また次に進めばいい。

もう逃げるのをやめて彼と向きあいなさい」

「お父さん…」

呼んだわたしに、お父さんは生きていた頃と同じように微笑みかけてくれたのだった。
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