由良先輩はふしだら
「あの日初めて、愛菜の代わりとしてじゃなくて、ひとりの女の子として、美子を感じた。帰ってからもそのことばっかで、全然眠れなくて。今日だってずっとそう。美子のこと考えると、心臓うるさくって……」
「……っ、」
『美子を感じた』
『心臓うるさくって……』
そんなセリフに、ボッと顔が熱くなって目線を慌ててレモンティーに向ける。
「……美子、」
優しく私の名前を呼ぶ先輩の声は、今まで横で聞こえてたのとは違って、私の頭上から聞こえた。
同時に、私の目の前に影ができる。
顔をあげようとした瞬間、フワッと再び大好きな香りが香って、私の目線の少し下に先輩の顔が降りてきた。
ベンチに座る私と、私の正面に向き合ってかがむ由良先輩。
「ごめんね。すごく自分勝手なこと言ってるのわかってる。たくさん傷つけて、振り回して、今更こんなこと。それでも、この気持ちを、我慢する余裕なんてどこにもない」
「……由良、先輩っ」
ほんのりと赤い先輩の顔を、走ったせいにしたくない。先輩が言葉を発するたびに、心臓の鼓動が速くなって、喉の奥が熱くて苦しくて。
「もう、この手、絶対離したくない」
由良先輩はそう言って、私の右手を優しくとって握った。