プレシャス~社長と偽りの蜜月~
「朱音と喧嘩したのか?」

「離婚の危機だ・・・」

「新婚なのにそれは寂しいね・・・」

俺と朱音の仲をかき乱した分際で、同情の言葉を掛けて来る。

「で、何?俺に仲を取り持てと言いたいのか?」

「別に・・・」

俺は足を組んで、ソファに背中を押し付けた。


「元々、嫌がっている朱音との結婚を強行したのは社長でしょ?」


「そうだ」


「・・・朱音は彼氏と無理心中した。どんなにゲスなオトコでも、朱音は惚れていた。朱音の記憶と心は死んだ彼氏に持って行ってしまったんだよ・・・言わば、今の朱音は抜け殻。それを分かってて結婚したんだろ?」

結城部長も俺と同じく足を組んでソファに凭れかかる。


「話はおしまい。下がっていいよ」

「朱音の何処がいいんだ?俺は朱音のような気の強い女は嫌いだけど」

「朱音の悪口を言うな!下がれ!!」

俺は怒鳴った。結城部長は仏頂面で社長室を出て行った。


抜け殻か・・・

結城部長の言葉通りだな。




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